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藤娘【ふじむすめ】


★歌詞カード★
←左のCD帯をクリックすると歌詞カードが見られます。
 *『藤娘』の歌詞には題材の「大津絵」にちなんで「近江八景」がよみ込まれています。それらをまとめた地図はこちらをクリック!




◆初演データ◆

 ◎勝井源八作詞、四世杵屋六三郎作曲
 ◎文政九年(1826)九月、江戸中村座
 *『歌えすがえす余波大津絵【かえすがえす おなごりおおつえ】』という五変化舞踊のうちのひとつ。
 **初演時の内容は「藤娘→座頭」(間に子役の「弁慶・猿・福禄寿」の踊りを挟んで)「天神→船頭→奴(船頭と奴が逆との説もあり)」で、役柄はすべて「大津絵」の画題から。
         ↓ 
 ◎安政元年(1854)七月、江戸中村座
 *三代目中村仲蔵(当時中村鶴蔵)が『連方便茲大津絵【つれをたより ここにおおつえ】』の中で、端唄の「潮来【いたこ】」を足し演出も変えて踊り大当たりをとる。
         ↓ 
 ◎昭和十二年(1937)三月、歌舞伎座
 *六代目尾上菊五郎が仲蔵以来定着していた「潮来」の代わりに、劇作家・岡鬼太郎の書き下ろした「藤音頭」を使い、美術も大幅に変更。「大津絵の藤娘」ではなく「松にからむ藤の精」という新解釈で踊り評判になる。それ以来、この時の演出が繰り返される。



◆主要キャラクター◆

藤の精【ふじのせい】
 松の古木に絡みついた藤の花に宿る精霊。人間の娘の姿を借りて松を口説く。





◆解説◆
歌と踊りで物語を表現する《舞踊》。

◆男狂いの藤娘?

 『藤娘』とは近江国(滋賀県)大津発祥の戯れ絵(元々は仏画)として有名な「大津絵」の画題のひとつで、「藤かつぎ娘」と呼ばれることもあります。
 これは元禄時代(1688~1703)に、京の金持ちの女性や遊女の間で“派手に着飾って近郊の寺社などに物見遊山に出かけ、その豪華さを競い合ったり(いい男を探したり)する遊び”が流行したのを風刺したものといわれますが、振袖の片肌を脱いで藤の枝をかたげた絵姿は《能》から来ているようです。

 《能》には、神憑りの真似事を生業とする「狂女」と呼ばれる渡り巫女を主役にした《狂女物》というジャンルがあり、その「狂女」の衣装が唐織を肩脱ぎにし、手に笹を持つというもの。大津絵の「藤娘」の格好とそっくりです。
 つまりこれは色狂い恋狂いが目的の享楽的な女たちを「狂女」に見立てた大津絵職人のきつい冗談なのです。




◆「大津絵」といえば

 「大津絵」が登場する有名な物語に、宝永五年(1708)の人形浄瑠璃作品『傾城反魂香【けいせいはんごんこう】』があります。
 後に歌舞伎に移されて現在でも人気の高いこの作品には、「大津絵」の創始者といわれる吃音の絵師・浮世又平(通称・吃又【どもまた】)が登場します。

 物語の後半に、彼の描いた「大津絵」が次々と実体化して悪者を翻弄するという見せ場(現在ではカット)があるのですが、これを《変化舞踊》へと書き変えて上演したのが『藤娘』を含む『歌えすがえす余波大津絵』なのです。
 *ちなみに「創始者=又平説」は作者の近松門左衛門が作り上げた嘘っぱちだそうです。たくさんの人が見事に騙されました。モンモン先生、相変わらず絶好調ですね。




◆あなた好みの「藤娘」

 「大津絵の藤娘」を、つまり派手な格好をして遊びまわる女性をモデルにした歌舞伎の『藤娘』は、長い間「遊女」の踊りとして演じられました。
 上の[初演データ]にあるように昭和に入ってから可愛らしい「藤の精」に変わりますが、本をただせば遊女の踊りですから歌詞は非常に官能的です。
 これは18禁アダルトPCゲームの対象年齢を下げて、家庭用ゲーム機に移植したようなものでしょうか?

 そのため「藤の精」という可愛らしいキャラクターと色っぽい歌詞の内容に多少ちぐはぐな印象を受けるかも知れません。
 ですがキャラクターの輪郭がぼやけたぶん、観る人がそれぞれ自分なりの解釈で楽しめるようになり、作品の持つ世界観が広がったと考えることもできます。
 なるべく先入観を持たず、自由に楽しみたい作品ですね。

 何はともあれ、まずは劇場に足を運びましょう。きっと愛くるしい藤娘が快く迎えてくれるはずです。
 藤の花言葉のひとつに「歓迎」というのがあるくらいですから。

 蛇足になりますが、私の好きな藤娘は…「背伸びして大人ぶってる藤の精」です!




◆予備知識◆

津の国【つのくに】
 摂津の国。今の大阪府と兵庫県の一部。
 現在ではカットされるが、冒頭から「~故郷へ飾る袖袂」までの歌詞は、初演の時に踊った「関三」こと二代目関三十郎(1786~1839)が18年振りに故郷の大坂へ帰る名残を唄っている。


若紫【わかむらさき】
 薄紫色。
十返り【とかえり】
 松のこと。「百年に一度花が咲き、十回繰り返すと実をつける」という伝説による。
藤浪【ふじなみ】
 藤の花が風になびく様子を波に見立てた語。
人目せき笠【ひとめせきがさ】
 (人目を遮る目的で被る笠のこと?)
由縁の色【ゆかりのいろ】
 紫色の別名。
いとしとかいて藤の花
 「い」の字を縦に「十(とう)」書いて、真ん中を「し」の字で貫くと藤の花に見えるというのと「愛しい」をかけた言葉遊び。
しょんがいな
 俗謡の段落のあとにつけるはやし言葉。
ほらほら
 着物の裾などがひるがえるさま。
しどけなく
 だらしなく。
鏡山【かがみやま】
 ここでは滋賀県の鏡山をさす。
疵瑕【しが】
 欠点、あやまち。近江の志賀とかけている。
みるめ
 「海松藻・海松布」と書く。「海松」という海藻のこと。和歌で「見る目」とかけて用いられた。
汐なき海
 湖のこと。ここでは琵琶湖をさす。

あたねたましい
 なんとも忌々しい。「あた」は悪い意味を持った言葉を強調する接頭語。
かこちごと
 嘆きごと。愚痴。
潮来【いたこ】
 茨城県潮来町で起こった俗謡で、文化(1804~1817)頃に江戸の遊里で流行した。
 三代目中村仲蔵が『藤娘』に取り入れ定着したが、現在ではカットされることが多い。


藤音頭【ふじおんど】
 六代目尾上菊五郎が「潮来」の代わりに挿入して以来、現在まで定着。
 “藤の根に酒を吸わせるとよく育つ”という説を生かしてか、酔った娘の踊りとして書かれ、曲の最後まで酔いが残る振り付けで初演にはなかった面白い効果を生んだ。振り付けは二世藤間勘祖。

忌み言葉【いみことば】
 不吉な意味に通じるという理由で使うことを避けることば。
常盤木【ときわぎ】
 冬でも緑の葉をつけている木。常緑樹。

掻取褄【かいどりづま】
 女性が歩きやすいように着物の褄を取って裾をかかげること。
小枕【こまくら】
 ①婦女子の結髪時に髻【もとどり】の中に入れる具。
 ②木枕の上に載せるくくり枕。

手枕【てまくら】
 ちょっと横になるときに自分の肘を曲げて枕の代用とすること。
夕照【ゆうでり/せきしょう】
 夕日、夕焼け。
 最後の部分は「花ある松の声々に 深き縁(えにし)の 春のささやき」と変えて演じられることが多い。



(予定上演時間 約20分)

テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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