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矢の根【やのね】

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*イラストやゲーム画面で楽しくわかる!
 →主要キャラクター
 →あらすじ


◆初演データ◆

 ◎村瀬源三郎
 ◎享保十四(1729)年正月、江戸中村座
 *『扇恵方曽我(すえひろえほうそが)』の一場面を抜き出したもの。
 **享保五年正月、江戸森田座『楪根元曽我(ゆずりはこんげんそが)』の中で演じられたのが最初という説もあり。




◆解説◆

歌舞伎のために書き下ろされた《純歌舞伎》。

 『矢の根』は、神田にある佐柄木(さえぎ)弥太郎という幕府御用の研物師の家で正月に行われていた矢の根研ぎの儀式(大どてらに縄だすきをし、炬燵やぐらに腰をかけて大きな矢を研ぐ真似をするというもの)を面白がった二代目市川團十郎(1688~1758)が、当時人気の高かった曽我兄弟の芝居に当て込んだ作品といわれます。

 歌舞伎の題材として人気の高い曽我兄弟は、幼くして亡くした父親の仇討ちに一生を捧げた鎌倉時代の若者で、思慮深く落ち着いた長男の十郎と気性の激しい次男・五郎のでこぼこコンビ(実は三男もいます)が協力して見事に仇を討つ、という解りやすさが仇討ち好きの江戸庶民にもてはやされたようです。
 『矢の根』の五郎は元服前の少年ですから、荒々しさと稚気が特徴の江戸前スタイル《荒事》と非常に相性が良く、團十郎の狙いは成功したといえましょう。



 おおらかな遊び心も《荒事》の特徴に挙げられますが、この作品ではこじつけのような言葉遊びが多用されていて、特に前半はそれだけで構成されているといってもいいくらいです。 

 正月の芝居らしくおせち料理を洒落のめした後で七福神の悪口を並べ立てるのですが、これも《荒事》の芸風のひとつで〈悪態〉という一種の邪気払いです。
 その時に〈大薩摩〉というBGM兼ナレーション担当の演奏者が五郎と掛け合い(問答)を繰り広げます。
 これは小説の登場人物が地の文と会話を交わすようなもので、とても特殊な演出です。
 しかもそれが終わると今度はその大薩摩の演奏者がそのまま舞台に降りて、五郎を"演じている役者のもとへ"年始の挨拶へ出向くというのだから驚かされます。(※残念ながら現在では挨拶に来る大薩摩を役者が演じるので面白みは半減しています)



 こういうノリは下手をすると観てる側が現実に引き戻されて鼻白むだけになってしまうのですが、その点『矢の根』は上手く扱っており嫌味がありません。
 言葉の意味がすべて理解できた江戸の見物客が、今よりずっと狭い芝居小屋でこの掛け合いを見る面白さというのは想像以上だったのではないでしょうか。


 後半になると今度は《荒事》の特徴的な動きが次々と披露されます。
 〈見得〉と呼ばれる決めポーズや、型を重視した独特の〈立ち回り〉など、基本を押さえた見本市のよう。


 このように『矢の根』は長い年月をかけて洗練されたおかげで、短く単純な小品でありながら江戸前の歌舞伎スタイル《荒事》の特徴を詰め込んだ贅沢な演目なのです。




◆予備知識◆

矢の根【やのね】
 射当てたときに突き刺さる矢の先端の部分。矢尻。
祝詞【のっと・のりと】
 神に申し上げることば。また、祓えに読むことばの総称。
慮外者【りょがいもの】
 無礼者。
うそぎたない
 なんとなく汚らしい。
精進日【しょうじんび】
 先祖や近親者の命日などで魚介、肉類を食べずに身を清く保つ日。
土仏【どぶつ・つちぼとけ】
 土製の仏像。布袋和尚の像をいうことが多い。
月代【さかやき】
 成人男子が額から頭の頂にかけて髪を剃り落としたもの。
船饅頭【ふなまんじゅう】
 船の中で売春をした私娼。
緩々【かんかん】
 のんびり。
末広【すえひろ】
 扇子のこと。
おっかって
 支えとしてあてがうこと。押っ支う。
やっとことっちゃあ、うんとこな
 《荒事》にみられる独特の掛け声。「やっとこさ」「どっこいしょ」「うんとこさ」を掛け合わせた造語。
舎兄【しゃきょう】
 実兄のこと。
馬子・馬士【まご】
 馬を引いて人や荷物を運ぶ職業の人。
肌背馬【はだせうま】
 鞍を置かない裸馬のこと。
白癩【びゃくらい】
 肌が白くなる病。「誓いに背けば白癩にかかる」という意味から誓いの言葉として用いられた。さらに転じて、「どんなことがあっても」「決して」の意味でも使われた。
曲馬【きょくば】
 馬術の曲乗り。
ゆゆしかりける
 勇ましい様子。




◆主要キャラクター◆
*名前をクリックするとステータス画面が見られます。

曽我五郎 時致
 父を殺した仇・工藤祐経(すけつね)を討つべく機会を窺っている。
 力持ちで気性が激しい猪突猛進型で、思慮深い兄の十郎からよく諌められる。
 トレードマークは蝶。

曽我十郎 祐成
 五郎の二つ上の兄。弟とは反対に理知的で落ち着いた性格。
 血気盛んな弟を抑えながらも仇討ちの機会を窺っている。
 トレードマークは千鳥。

●大薩摩 主膳太夫
 《荒事》の伴奏音楽として栄えた大薩摩の演奏者。

●馬士
 初荷の大根を馬に積んで売り歩く。

●後見
 芝居が始まると五郎の両脇に柿色の裃を着けた人が向かい合って座っていますが、これは『後見【こうけん】』といって物語上は存在しないことになっている演技の補佐役です。舞台上で役者の着替えを手伝ったり小道具の受け渡しなどをします。
 全身黒ずくめで顔まで隠した『黒衣【くろご】』が一般的ですが、舞踊や一部の演目では袴姿で顔を出して務めます。





◆あらすじ◆
*場名をクリックするとゲーム画面が見られます。

矢の根 其の①
矢の根 其の②


(予定上演時間 約30分)

テーマ : 歌舞伎
ジャンル : 学問・文化・芸術

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